ダンディとは何か・・ジョージ・ブライアン・ブランメルから現代まで

『ダンディ』という言葉の捉え方は人によってかなり異なるのではないでしょうか?
DANDY(ダンディ)を単に「お洒落な男」と解釈するのは大雑把すぎると思うのです。
ダンディをウェルドレッサーという意味で使う方は多いのかもしれません。

「ダンディ」は風貌についての形容詞であると同時にライフスタイルを含む特異な存在感を表現する呼称でもあります。
貴族的超越的存在感。これこそがジョージ・ブランメル(1778年生まれ~1840年没)が登場した所以。
ダンディ(な人物)は中世の貴族のように富裕層に属し、独自の悦楽を堪能する時間を持ち合わせた存在である。

着飾るというよりも質素かつディテールに徹底的に拘った出で立ち。加えて自由人であること。
文献からは、より排他的で、芸術的に生きるという困難かつ興味深い欲求が見られます。

ダンディとは時代の傾向に反して、ほかの誰とも違う「奇想天外な服装をした無頼漢」といったところでしょうか。

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文献から解き明かすダンディズム

19世紀初期、イギリスでジョージ・ブランメルとともに誕生したとされる。
フランスではシャルル・ボードレールとバルベー・ドールヴィイがダンディの理論家として登場。
イタリアではダヌンツィオの行動にダンディとしてのスタイルが見られた。(らしい)
19世紀末、オスカー・ワイルドビアズリーによってダンディが実践されることになる。・・・

「そしてつまるところは、よい趣味を働かせるほかには職業のない男、こうした男は常に、どんな時代にあっても、際立った、人とはまったく別物の、風貌をそなえていることだろう。
これらの者たちは、自分の身の中に美の観念を培養し、自分の情熱に満足をあたえ、感じ、そして考えることの他には、なんの本職ももたない。・・・
何よりもまず品位を重んずる彼の目から見れば、身だしなみの完璧とは絶対的な単純こそ品位をもつための最善の道である。」
ボードレール『現代生活の画家』
ボードレール批評〈2〉美術批評2・音楽批評
美の歴史ウンベルト・エーコ より抜粋)

(ダンディとは)
仮装趣味よりも節度を尊び、反順応主義にも品位を尊ぶ。
有閑階級に属したいという願望。
「芸術的感興によって、しかもそれのみによって人生を作りあげること。」
ポール・ブールジェ

往々にしてダンディは、人生は何より一個の芸術作品として生きるべきだと考える人々と意見を共にしている。

優美な仕草、当意即妙の才、威厳の在る態度、さらには人生全体の様式をいかに芸術の規則にまで高めるか
純粋な創造行為、いささかも武勲に依らぬ英雄性、身分を必要とせぬ高貴さ、追従せずして人の心を惹く魅力。ここから刺激的な、しかも威圧的な、一種の美が生まれる。

ダンディは目立たねばならない。だが見えすいた手段に頼って目立とうとしてはならないのだ。
「ダンディの美の特質は、わけても心を動かされまいとする不抜の決意からくる冷ややかな様子にある。外から透けて見える潜んだ火、とでも言うべきか。その火は、輝くこともできるのに輝こうとしないのだ。」
ボードレール

「ダンディは・・くさぐさの情念や仕事に身を引き裂かれはしない。
生涯が不断の自殺であっても、めったに本物の自殺はやらない。」
サルトル

ダンディの神話 (1980年)E・Carassus著 山田登世子訳 より)

ユイスマンス著『さかしま』の主人公デ・デッサントもダンディのひとりと言える。


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最初のダンディ-ジョージ・ブライアン・ブランメル

George Bryan Brummell ジョージ・ブライアン・ブランメル
1778年6月7日生 1840年3月29日没

通称 ボウ(BEAU=美しい)・ブランメル
趣味の判者
ダンディ創始者
後のジョージ4世は友人

イギリス社交界では話題の的。
ネクタイの盛り方、折った襟のフォルム、優美にフィットしたテイルコートなどの着こなしを多くの貴族が真似したと言われる。
最初のファッションアイコンは彼だったと言えるのではないだろうか。

しかし・・

(役所の)仕事そっちのけで、自らの着こなしへの注力と他人のおしゃれへの辛辣な冷やかしに明け暮れた生涯。
俄かお洒落人をやり込める言動は決して褒められるものではないし、鬱屈した精神の表れだったのかもしれない。
愛情を育んで結婚することも、子をもうけることもなかった。
最後には破産し、精神に異常を来して亡くなったジョージ・ブランメル。
残念過ぎる。
彼は 一冊の服飾評論だけを書き残した。
その気になれば書くこともできただろう親しい友人ジョージ4世の暴露話を胸に納めたのには感心する。

彼の風貌が実際どんな様子だったのか、写真が残っていないようなので、想像がつかない。鉛筆画のようなイラストレーションも数点あるが、顔つきがまったく違うので弱ってしまう。

①スカーフを高く念入りに巻き上げた若い頃のポートレイト。このドローイングはやや甘く美化されたイメージ。

②中年の頃と思われる立ち姿が一枚。これは正確な描写ではなくカリカチュア(風刺画)としてのディフォルメ。『ダンディ』本人を茶化している。
よく参照されるこれら二枚はどう見ても同じ人物とは思えない。
風刺画のほうがより本人の特徴をうまく掴んでいるのか?
WIKIPEDIA

③もう一枚は作者不詳の油彩画。当時洒落者はコルセットを着けていたという解説が付いている。
似ているという気がしない。
MARQUISE.DE

『・・コレクションは嗅ぎ煙草入れ
下僕のセレギューは1830年に彼と別れ、パリでコーヒーショップを営む・・』「ボウ ブランメル」堀 洋一著(絶版)より

Male and Female Costume
彼が出した唯一の著書
社交界が盛んだった19世紀当時の服飾評論

ダンディを体現する人々

在り方、佇まいそのものが特異な人物。
ダンディとはそういう人のことだと私は解釈している。
そして発言や行動が尋常ではない影響力を及ぼす人物がカリスマと呼ばれる人物なのだろう。

おしなべて作家と呼ばれる人々は、皆ダンディなのではないでしょうか。
創造者として、独自のスタイルを追求し続けねばならない職業であるので、美醜の判断や、ものを選び取る基準に確固たる信念があるに違いない。

ただ思い通りに、装い、暮らすには相応の経済的成功を見ないことにはままならないわけで、あのチャールズ・チャップリンが映画で得た報酬で最初にしたことは、有名店でのスーツのオーダーだったそうな。

20世紀著名作家のポートレートはなかなかのもの。
残念ながら日本では三島由紀夫以外思い当たらない・・

醜く太っていたり、痩せすぎていたり、憧れるに足る要素を持たない作家は除外してしまう。

作家
・ダヌンツィオ

・サルトル

・ジェームス・ジョイス

・ダダイストすべて

映画監督
ジャン・ピエール・メルビル
クロード・シャブロル
アンリ・ヴェルヌイユ
チャールズ・チャップリン
ロベルト・ロッセリーニ
ルキノ・ヴィスコンティ
ルイ・マル
ミケランジェロ・アントニオーニ

画家
クリスチャン・シャート

サイ・トゥオンブリ
ポール・デルボー
・シュルレアリストすべて
ほか多数・・・
それぞれの作品はやはりすばらしい。

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現代のダンディズム

今の時代は「気取った伊達男」というイメージは、好感度が低い。
現代のダンディを表現するなら、抑制の効いたエレガンス渋さのある風情。

たとえばルイ・マル監督「鬼火」の主人公。
虚無思考の過ぎた主人公(モーリス・ロネ扮する)アランの姿が醸すさりげない洗練。
しかしこれも随分古い。そしてアルコール中毒患者。
「鬼火」は1963年公開のフランス映画。
主人公のアランはジャック・ リゴー1898–1929という自殺したダダイズムの詩人がモデル。

美の意識を変革するようなインフルエンサー(influencer)は一部のファッションデザイナーになるのかもしれない。
着こなしが話題にのぼるような人物は見当らない。

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