アンティーク・オールド腕時計の魅力
腕時計には男のこだわりとセンスが表れる
20年以上前になりますが、輸入宝飾品の営業で小売り店回りをしていました。大阪、神戸、京都、東京など会社の得意先を中心に新作の紹介、委託分の回収、そして仕切り(買い取り)分の決済などをおこないます。店のオーナーや責任者と世間話や業界の裏話なんかをしながら進めていきます。
大阪のある得意先にワンマン社長がいました。社員のスパルタ教育が噂されるちょっと怖い感じの一代たたき上げのオーナーです。
1~2カ月おきのペースで訪問。挨拶のあと、キャリーケースから商品をバランスよく配置したジュエリーケースを開き、目の前に並べていると、突然社長が私の左手首を力強く掴んで引き寄せ、時計を睨んだのです。
アンティーク時計専門店で数日前に買ったロンジンの1960年物を凝視していたのでした。それはシンプルな薄型シルバーケースの腕時計で、座った社長の目からはきっと私が専門店で陳列棚で衝撃的に見つけた時と同じ状況だったに違いありません。
およそ50センチの距離から見た私のロンジンは中心からかすかな黄色味が円周に向かうほどにグラデーション状濃くなり、シルバーの長針と短針、それにインデックスには金粉を散らせたかのような微妙な輝きが見て取れたのです。
古い時計独特の柔らかい色調で仕掛けのある懐中時計のような趣(おもむき)がありました。
見た瞬間に購入を決めたそのロンジンには独特のインパクトを受けました。落ち着いてよく観察すると、文字盤は白いホーローでできていて、ムラになった黄ばみが広がっていました。銀色の長針・短針とインデックスにはところどころ錆付きがあり、照明の具合で金色に輝いて見えたのです。
社長はしばらくロンジンを見つめたあと手を放し、なにごともなかったようにジュエリーに目を移したのでした。きっと社長も時計好きで、なんだこの時計は?と一瞥では理解し難かったはず。手元に引き寄せ、オールドのロンジンだと確認して納得されたんでしょう。(厳密にアンティークとは100年以上前の物を差し、100年に満たないものはオールドと呼びます)
年齢の差はあれど、男同士共通の趣味を見つけた。そんな歓びを感じた日でした。
腕時計アンティークとオールドの違い
正確には製造後100年未満のものは、『アンティーク』ではなく『オールド』と呼びますが、最近では現代の時計とはあきらかに違う雰囲気をもつものなら製造されてからの経過期間にあまりこだわらずにアンティーク時計として紹介されています。また現存する数量が少ないので『ヴィンテージ』とも呼びます。
半世紀以上前に持ち主の腕を飾った時計。
味わい深い独特の雰囲気には、現代のブランド時計では到底真似のできない『気品』、『貫禄』が感じられます。
1980年代から海外の有名オークションハウスが機械式腕時計を扱い始め、投機の対象としてもその価値が認められるようになっています。
数あるブランド時計の中でもロレックスROLEX人気は絶大で製品すべてが希少品。
アンティークウォッチ・ヴィンテージウォッチ・・それは身に着けることのできる美術品であると言えます。