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合成ダイヤがメジャーを目指しつつある?
どういうことかと言いますと、世界のWWD(1910年フェアチャイルド出版がメンズ・ファッション日刊紙「デイリー・トレード・レコード」の付録として創刊した雑誌「WWD(Women’s Wear Daily)」のこと)が記事にしたんです。
合成ダイヤとは模造ダイヤのことで、30年ほど以前から市場に登場しているもの。「CZ」つまりキュービック(立方晶)ジルコニアのことかと思ったが違うようだ。
キュービックジルコニアは透明石ですが、耐熱性のセラミックの材料として使われる二酸化ジルコニウムに、酸化カルシウムや酸化マグネシウム、酸化イットリウムなどを混ぜて結晶化させたもの。ダイヤの代わりとして宝飾品にも使用されていますが、実際のダイヤモンドと比べると「照り」(てり)つまり輝きの強さの違いはあきらかです。
モース硬度は8~8半
ダイヤモンドのモース硬度は10
ちなみにサファイアは9、エメラルドは7.5から8
CZ(キュービックジルコニア)は傷つきやすいということです。
KIMAI(キマイ)合成ダイヤブランド
WWDが取り上げているのはイギリス発の新進ブランド「キマイKIMAI」(2018年設立)。数々の著名人に着用してもらい話題になっている。
このブランドを立ち上げたのがベルギー・アントワープ(ダイヤモンド取引の本場)のダイヤモンドトレーダーの二人の娘だというから驚き。
お父さんは何といているのだろう?反対したのか?「これも時代の流れか・・」とか?
シドニー・ノイハウス(Sidney Neuhaus)(宝石鑑定士シカ・ワーチ(Jessica Warch)(ビジネススクール卒)の2人は合成ダイヤモンドと100%リサイクルのゴールドを使用したジュエリーと、ビスポークの婚約・結婚指輪を約2万5000円~20万円の価格帯で提供している。
WWDジャパンより引用
ーー合成ダイヤになぜ可能性を感じた?
ワーチ:私たちはダイヤモンドトレーダーの過程で育ったから、ダイヤモンドジュエリー業界で働きたいとは長年思っていたの。でも18歳のころ、この業界のいかに環境破壊に加担し、サプライチェーンの透明性が欠如しているかという深刻な問題に気づいて、時代遅れの業界に幻滅したわ。それから何か新しい方法で改革したいと模索し、合成ダイヤなら業界の問題解決につながると確信したのよ。
なるほど「ブラッド・ダイヤモンド」も映画にまでなって問題提起されたし、取引所に持ち込まれるダイヤの出自はあきらかではなく売り手市場。そんな天然ダイヤモンドに誰もがそっぽを向いたとしたら、天然ダイヤモンド市場は滅びるだろう。日本のようにリサイクル花盛りの市場ならまだ天然もの(?)が生きながらえるのだろうが、ゆくゆくは需要と供給の法則で価値は大きく損なわれるのだろうか?
ENEY(エネイ)合成ダイヤブランド
(WWDジャパンは)日本国内の合成ダイヤブランドも取り上げている。松屋銀座本店が新規事業として立ち上げたジュエリーブランド「エネイ(ENEY)」
「・・エニー(ANY)とエネルギー(ENERFY)をつなげた造語で、ラポグロウンダイヤモンドを使用したジュエリーなどを販売する。」としている。
ラポグロウンダイヤモンド
先にあげたKIMAIも合成ダイヤ、ラポグロウンダイヤモンドをメインに取り扱っている。(”ラポグロウンダイヤモンド”で検索してみるとわかる)
ラポグロウンダイヤモンドは天然ダイヤモンド と完全に同じ成分・特徴を持っておりモアッサナイトやキュービックジルコニアなどの模造石・類似石とはまったく異なるそうだ。
引用:SHINCA公式サイト
硬度10とは本当か?天然ダイヤと同じ硬度10ならまったく問題はない。
ダイヤモンドの輝きはカット技術で決まる。ダイヤ全体のプロポーションと各ファセット(カット面)の精度。第一級のカットと研磨技術よってすべてのラポグロウンダイヤモンドが作られるならもう文句のつけようがない。
婚約指輪などでダイヤの4C(グレード)と予算から折り合いをつけて選ぶという面倒な作業はなくすことができる。
まさしくECショップ向きの素材と言える。
SHINCAラポグロウンダイヤモンド取扱いブランド(店舗:東京・京都・ソンガポール)
結構長い期間宝飾品業界にいた者としては考えさせられるものがある。このまま業者が採掘を続けていればいつかはもうこれ以上は無理だという日が来るのだろう。さりとて地層に長年眠っていた鉱石の中で最も輝きを放つ貴石、ダイヤモンド。自然が育んだ地層に眠り、鉱物としてのエネジーを放ち続けるプレシャスストーンの価値は歴史の中で受け継がれてきた有名ダイヤ同様、貶められるものではないとは思う。